高脂血症の状態か続く

アルコールとカロリー過多で43歳で狭心症に(男性・初診時39歳)Kさんは昭和30年生まれ、非常に頑丈そうで快活な人です。1994年10月(39歳)に人間ドックで肥満270センチ、80キロ、BMI(17.7)、高血圧(150/105)、糖尿病(空腹時血糖280)を指摘され当科を受診しました。タバコ20本、アルコールはビール1本、焼酎「五合程度」、エネルギー制限(1840キロカロリーごと減塩(1日7グラム)を中心に食事指導を行いました。

アルコールがかなり多いことを除けば食事療法はきちんと守り。血圧は徐々に下がってきました。しかし95年夏より糖尿病が悪化し、3ヶ月で体重が5キロ減少、2月空腹時血糖242、糖化ヘモグロビン9.7%と急激に上昇したので経口糖尿病薬を開始しました。アルコールは週に2回に減らすよう指示しましたが、守っていたのは3〜4ヶ月、96年夏には体重が80キロに戻り、空腹時血糖190〜100と上昇、高脂血症も合併してきました。

忙しくて運動している暇がないことも悪化に拍車をかけたようです。97年は高血糖高脂血症の状態か続き、10月からしばらく来院しませんでした。98年2月の受診時に、坂道を歩くと胸部圧迫感があると訴えました。まだ43歳と若く、頑丈そうですか、訴えがいかにも狭心症そのものなので、トレッドミル運動負荷試験を行いました。結果は非常に悪く、本人は仕事を理由にいやがりましたが、放っておくと急死する可能性があると説得し、入院となりました。

冠状動脈造影検査を行ったところ、左冠状動脈主幹部に腫瘍があり、本当に急死するところでした。5月に大学病院でバイパス手術をうけ、元気に働いています。この例では、かなり大量の飲酒と仕事にかこつけた運動不足で血糖値とコレステロールが高かったこと、そして禁煙出来なかったことが重症の冠状動脈硬化症を起こした原因と考えられます。まだ若いから大丈夫、という油断が患者本人ばかりでなく主治医にもあったことは確かです。95年夏、糖尿病が悪化した時に禁煙しているかを確認しなかったことが大きな反省材料です。

生活習慣病予防
生活習慣病は、今や健康長寿の最大の阻害要因となるだけでなく、国民医療費にも大きな影響を与えています。