指定金銭信託(合同運用)

これは、おおぜいの人が信託したおカネをひとまとめにして運用し、それからあかっか利益を、それぞれの信託したおカネの額に(これを信託金額といいます)応じて受益者に分けるものです。例えば、仮に五万円、十万円、十五万円、合計三十万円の三つの信託を合同運用して三万円の利益があったとすれば、その利益を各人の信託金額に応じて五千円、一万円、一万五千円といったように分けるわけです。もっとも同じ五万円を信託しても、その信託期間に長短があれば分配する利益の額は違ってきます。長い期間のものほど分配の割合が多くなるのです。これは、長くおカネを提供していればそれだけ有利に運用できるからです。

もともと信託の建前からいえば、前に述べたように実績配当によるべきですが、この合同運用に限ってこの原則に従わないことになっています。これは一口五千円とか一万円といった小口の信託を何千口、何万口も別々に扱っていたのでは手数がかかり、またある程度大きくまとまらないと有利に運用できないからでナ。そこで運用方法が大体、信託会社に任されているこの指定合同運用信託に限ってこれをいっしよに運用して、信託期間別に一定の配当金を決めて利益を分配しているのです。

昔はこの配当率は信託会社によってまちまちでしたが、戦時中から政府の指導によって各信託会社とも同じ利率にナる慣例になっています。配当率は、一年以上のもの、二年以上のもの、五年以上のものの三種類について、国債の利子や公定歩合を基準にしてあらかじめ決められており、毎年、三月と九月にどの信託会社でも信託金額にこの比率を掛けた利益を受益者に支払うことになります。

このように、あらかじめ配当の利率が決まっているということは、実績配当の趣旨にそわないのですが、元本を保証する契約がついているため預金と同じような性質が強く、この結果預金との釣り合い上からもこうした方法がとられているのです。このため合同運用信託は信託預金とも呼ばれています。もっとも、収益については、銀行の定期預金のように受け入れの際に満期までの利率を約定するのでなく、毎期の金融情勢によって変わることがありますので、その意味では信託の原理が生きているともいえます。