不確定要因を生んでいる

同省は2003年7月、食糧庁廃止に伴い、その出先機関である全国47の食糧事務所も廃止した。ところが同時に、直前に起きたBSE(牛海綿状脳症)問題を理由に、食の安全を担うとして「消費・安全局」を新設。結局、食糧事務所に勤務していた約8000人の職員はほぼそのまま現在の農政事務所に異動させた。

「あの時、業務や人事の問題にメスを入れなかったことが、事故米などその後の不祥事の背景にある。同じ過ちを繰り返してはいけない」と自らを戒める幹部もいる。さらに不確定要因を生んでいるのが、政権交代だ。

農家への戸別所得補償制度を掲げる民主党筒井信隆ネクスト農相は、読売新聞の取材に、同制度のベースとなるデータを集めるには、今以上に統計部門を充実させる必要が生じる可能性もあるとの見方を示し、「この制度をやるためにどんな組織・人員が要るかゼロから検討する」と話す。

地方分権改革推進委員会委員として、国の出先機関のあり方を議論している猪瀬直樹東京都副知事は「戸別所得補償を掲げる民主党が政権につくと、組織がさらに膨れあがる可能性がある。農水省は組織を維持するために仕事を作ってきた。不要な業務や人員の問題を放置してきたから、事故米ヤミ専従の問題につながった。地方でもできる仕事を自治体に移管することで、国家公務員を削減しなければ改革にならない」と話している。