門戸を世界に広げる

平成二年三月に「大分県先哲叢書編纂審議会」が発足。歴史学者、考古学者などを委員に任命し、すでに刊行への作業が始まっている。大分県では六一年から、「おおいた音楽芸術週間」を開いている。毎年一一月から二一月にかけて、内外の演奏家を招く。県民に音楽の素晴らしさを味わってもらう。この「おおいた音楽芸術週間」でもっとも大きな行事が、園田高弘賞ピアノコンクールの開催である。

園田高弘さんは、ピアニストとして世界的に著名だが、園田さんの父・清秀さんが大分市生まれということもあって、大分にゆかりが深い。「芸術は長い時間がかかる。若い人の可能性を認め、勇気づけ、伸ばしていくことが必要で、可能性を信じていくことが大切だ」と園田さんが六〇年に来県されたときにうかがった。そこで私が、「大分でピアノコンクールを始めたい、それもワルシャワのピアノコンクールに匹敵するようなコンクールにまでしたい」と話すと、園田さんは「文化や芸術には地方と中央の差はない、ぜひ協力させてください」と快諾され、園田高弘賞ピアノコンクールが始まった。

最初の頃は、コンクール参加者を大分県在住者か大分県の出身者に限っていた。ところが園田高弘さんが直接審査してくださるということで、評判が高まり。県外からもコンクールに参加させてほしいという声が聞かれた。そこで次第に参加資格を広げ、平成元年度からは対象を近隣諸外国にまで広げている。ちなみに、平成元年の園田高弘賞は韓国の朴鐘訓さん(延世大学二年)。大会五回目にしてはじめて、国外からの参加者が優勝した。この園田高弘賞ピアノコンクールを、世界一流のピアニストとなるための登竜門にしたいと考えている。近いうちに、門戸を世界に広げるつもりだ。

これからも、ローカルでありながらグローバルに通用する個性ある文化を創造する作業を続けていきたいと思う。これまで大分県で行なってきた地域活性化の方法を述べてきたが、一村一品運動にしても、高齢者対策にしても、またハイテク企業誘致、テクノポリス建設、地域文化の創造などにしても、ほかの県や市町村でも何らかの形で行なわれているものであり、とくに珍奇なものではない。